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2007年6月14日 (木)

「モスクワからの退却」

6月9日(土)、下北沢の本多劇場で、加藤健一事務所の「モスクワからの退却」を見てきました。

出演は、加藤健一さん、久野綾希子さん、山本芳樹さんです。

山本さんは、加藤健一事務所に初客演で、普段は、男性ばかりの劇団「StudioLife」にい所属しています。私は見ていないのですが、「トーマの心臓」とかで有名な人気劇団だそうです。美形ばっかりいるのでしょうね~(^.^)

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エドワード(加藤さん)とアリス(久野さん)は、50代の夫婦。ジェイミー(山本さん)は、その二人の一人息子です。

アリスは、詩を愛する個性的な女性で、エドワードを深く愛していますが、何を言ってもはっきりしないエドワードに焦燥感を覚えています。

一方、エドワードは、クロスワードを愛する穏やかな学校教師。アリスを思いやり、アリスに合わせようと暮らしてきましたが、どうやってもアリスをいらだたせてしまう結果に終わることに疲れ果てているといった設定です。

ジェイミーは、32歳になりますが、まだ独り身。舞台はイギリスです。

33回目の結婚記念日が間近に迫った週末、ジェイミーが二人を訪ねてきます。

Cimg1420

そして、翌朝、アリスが留守の間、エドワードはジェイミーに、アリスと別れるつもりであると話します。さらに、別の女性を愛していることを打ち明けるのです。

壊れかけた二人の関係をアリスは何とか立て直そうとしますが、エドワードの決意は固く、家を出て行きます。

そして、両親を愛するジェイミーは、二人の間に挟まれて苦悩します・・・・・・・・

Cimg1421

                 ***

最初、題名を聞いたときは、戦争ものだとばかり思っていました。でも、そうではありませんでした。

この「モスクワからの退却」というのは、ナポレオンのロシア遠征からの退却を意味するもので、エドワードがモスクワから戻ってくる兵たちの本を読んでいたことから、時々エピソードが劇中に登場するのです。

つまり、退却途中で病気になった者やけがをした者は、足手まといになるために、凍った大地に捨て置かれていった。それでも軍は見て見ぬふりをしながら退却していきました。助けていては、全員が死んでしまうからです。

アリスは、エドワードが目の前にいても、どこか心がここにないと感じていて、自分を見てほしい、向き合ってほしいと願って、エドワードを追い詰めていきます。たとえののしってでも、自分に本音を言ってほしいと。それこそがアリスの理想とする結婚生活なのです。

でも、エドワードは、どんなに努力をしても、アリスに否定され続ける自分は、アリスにふさわしい夫になれない感じてきたのです。だから、アリスと向き合うことを避けてきました。でも、ひょんなことから、今の自分は本当の自分ではないとわかってしまう。

エドワードは、アリスからずっと逃げていましたが、ある日、二人は別の道を行くべきだと決心して、別れを告げ、出て行きます。エドワードは、自分が自分らしくいられる女性を別に見つけたからです。

アリスにとっては青天の霹靂。どうにかしてやり直したいと、あれこれやってみますが、エドワードは逃げていくばかり。そして、アリスはどんどん傷ついていき、壊れていきます。ジェイミーは二人の間に立ちますが、どうすることもできず、見守るしかできない。

アリスは、「これは殺人だ。あなたは、私たちの33年間を否定した。あなたは強者で、弱者を見捨てていくのね」というようなことを言います。エドワードは安らぎを見つけましたが、これから老いていくだけの自分には何もない、モスクワからの退却で打ち捨てていかれた兵士と同じだと。

同じ方向を向いて歩いていけると思っていたアリスと、自分はアリスの望むような男にはなれない、アリスを幸せにはできない、アリスと出会ったこと自体が間違いであったのだと思うエドワード。

今、熟年離婚が多いですが、普通は、だんなさんが愛想をつかされて離婚というのが多いですよね。今回はちょっと違って、アリスはエドワードを深く愛しているのです。でも、エドワードはそうじゃない。アリスには幸せになってもらいたいけれど、自分はその相手ではないのだと思っている。

アリスは、もがき苦しみ、いろんなことをしながらも、自分の好きな詩を集めた私詩集(アンソロジー)を編集し、エドワードに渡そうとします。詩は自分の一部だったから、それを彼に持っていてもらいたいと。その中にナイフを隠し持って、エドワードの前で死ぬつもりで、彼を訪ねます。エドワードは、「いつか来ると思っていたよ」と。

そして、二人で話すうち、エドワードは、「君と過ごした33年は、間違っていたかもしれないけれど、確かに自分の一部なんだ。別れても、それは変わらない。それがようやくわかったよ」といいます。そして、アリスが好きだった詩の一部を、「全部じゃないけれど、覚えているよ」と、暗唱してみせるのです。

アリスはそれを聞いて、エドワードを許しました。すべてが消え去るわけじゃない。自分と過ごした日々も彼の一部だったんだと聞いて、一人で歩き出せる気がしたからです。

そして、ジェイミーの苦悩もありました。最後、彼の独白で舞台は終わります。「母は一番の女。そして父は一番の男。自分にとっては、いつまでもそうなんだ」と。

最後まで、どうなるのかと、はらはらしながら見ていました。

でも、一筋の光が見えた気がしました。アリスの苦しみ、エドワードの苦悩。ジェイミーの気持ち・・・涙なしには見られませんでした。

セリフも膨大で、出演者は3人。舞台に出ずっぱりです。いつものカトケンワールドとは違う、でも、やっぱり素敵な舞台でした。

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コメント

加藤さんの舞台は1度も観た事がないんですが
固定ファンって多いですよねぇ。
せっかく2週間も日本にいたのに
観劇できなかったな。。。
(今となっては、考えもつかなかったのをちっと後悔)

舞台・・・暫くご無沙汰してます(涙)
ぺんたさんのレポを読み応えがあって
ホント楽しいです♪
最近、帰宅してもすぐ眠気が襲ってきて
何も手につかないRieでした(^^;)

ぺんたさんのレポはいつ読んでも
わかりやすく、ついつい引き込まれます。
今回も最後はどうなるの?ってハラハラしたけど、
お互いに理解が出来て良かったです。

舞台に行く機会がないんですが、
ぺんたさんのブログで紹介してもらえるのを、
楽しみにしています((o(^∇^)o))わくわく

いつか、お勧めの舞台を観に行きたいです(*^-゚)vィェィ♪

★たけうささんへ
そーだ、日本にずっといらっしゃったんですもんね・・・でも、それどころじゃなかったですよね(^_^;)たぶん、加藤さんの固定ファンはたくさんいると思います。いつもはほろっと来る喜劇が多いけれど、たまにシリアスなのもやります。今回は、またちょっと違った感じでしたね。

★Rieさんへ
Rieさんもお忙しそうですね~
私も今週はずっと調子が悪く、このレポも日曜に書いたものを木曜にアップしただけで(笑)
やっと体調も戻ってきました。

★バニラさんへ
バニラさんもお仕事を始められて、きっとお疲れでしょう~(>_<)
でも、楽しそうな職場で、よかったですね!自分のペースで頑張ってくださいね~
おもしろい舞台があるといいのですが・・いっそ、宝塚デビューしてみようか、なんて考えてます。(笑)

色々と考えさせられる舞台ですね~
人を想うことの難しさを改めて感じたokayaです。
ぺんたさんの舞台レポート、なかなか見に行かないokayaにとっては楽しみの一つになりつつあります♪

★okayaさんへ
ありがとうございます~
今回は、あらすじほとんど書いちゃいました(^_^;)東京でしか公演がないみたいなので・・・
シリアスものなんだけど、観客から時々笑いが入るんですよ。新聞の講評なんかだと、たぶん、「あー、そうそう」って共感できるところがある笑いじゃないかと書かれていました。身につまされる、ということですかね~

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